2004年9月
シャドウを納車してからわずか数ヶ月だったにも関わらず、自分の脳内はその一言で埋め尽くされていました。
HARLEY-DAVIDSON FLHR・ロードキング
しかし、これは皆が持っている『いつか乗りたい!』と言うような憧れではなく
一体どんなバイクなんだろうかという率直な疑問。
シャドウまっしぐらだった自分は写真ですらハーレーを見たことがない時期。
シャドウを買ったショップにもハーレーはあったものの、
今思えばFLH、FLST系のクラシックスタイルは1台もなく中古車であったために値段も国産大型車と大差ありませんでした。
他にも様々な理由がありましたが、当時は大型国産クラシックへの憧れの方が遥かに強かったと思います。
しかし、シャドウのカスタムカタログにもしきりに出てくるその文字。
『ハーレースタイル、FLHスタイル。』
雑誌に出てくる皆の言葉。
『いつかはハーレー、ロードキングみたいに。』
『まずはどんなバイクか知りたい』ということで、ハーレーの車輌カタログを注文。
数日後、2004年のカタログが手元に届いたので早速中を見てみました。
『ロードキング・・・ロードキング・・・あった!』
ソレは全56ページ中36ページ目に載っていました。
しかし待っていたのは『写真で見た瞬間好きになった』というようなありがちな話ではなく、
ショップで見ていたスポーティーなハーレーの印象が強く先行していた自分にとって
クラシックスタイルでありながらもカタログの最後辺りに小さく掲載されているバイクが華やかに映るはずがありません。
何よりも理想的なスタイルを手に入れるために、シャドウにもそれなりの金額を注ぎ込んでいたにも関わらず
そんな自分を奈落の底へ突き落とすかのような非現実的な金額。
その時点で憧れというよりも興味本位のようになっていたのかもしれません。
『人気・・・無いのかな・・・。』
当時は何もかもがはじめての経験、第一印象というのは非常に重要です。
結局シャドウに一番近い形であろう、FLSTCヘリテイジクラシックに軽い興味を示すのみとなり、
本棚にしまったそのカタログはいつしかシャドウのカスタムパーツカタログの奥に埋もれていきました。
時は過ぎて2004年11月
この頃にはシャドウのカスタムも完成に近づき、バイクショップに行ってはパーツ物色に明け暮れる日々。
そんなある日、とあるバイクショップでコーヒーを飲んでいた自分の目の前を一台のバイクが出発しようとしていました。
見るからに年配の方、シャドウより一回り小柄な車体なのに取り回しに苦労している様子。
『免許取ったばっかりなのかな・・・』
頭から停めていたシャドウのちょうど後ろ辺りに一度停め、出発の準備を整えて跨るオーナー。
キーを回し、アクセルを捻り、スターターを押した次の瞬間
ズドォォォンッッッ!!
周りのざわめきを一瞬にして掻き消す轟音、周囲の視線が一瞬にしてそのバイクへ。
一番近くでソレを聞いた自分は暖かいコーヒーを飲んでいたにも関わらず、
鳥肌を通り越して一瞬の内に冷や汗が吹き出ていました。
『なんなんだ、このバイクは・・・』
ドッ・・・ドッ・・・ドッ・・・ドッ・・・ドッ・・・
アクションDVDを大音量で見ているような、重火器や爆薬を思わせるず太い排気音。
コンパクトな車体からは想像もつかないような強烈な重圧。
必死で目をこらすと、今まで見たことのない形のタンク・・・ダメだ、字が見えない。
そのバイクが震えていたせいなのか、それとも自分が震えていたせいなのか・・・。
呆然とする自分をあざ笑うかのように、そのバイクは凄まじい爆音と共に一瞬で目の前から消えました。
時間が止まったかのようにその場に立ち尽くした自分は
あまりのショックにパーツを探すことも忘れ、家に帰ることしかできませんでした。
『あのバイクは何だったんだろう・・・』
お気に入りの歌の1フレーズを口ずさむかのようにブツブツとその言葉を繰り返し、
本棚に整然と並ぶありったけのバイクカタログを次から次へと捲る。
しかし探せど探せどあのタンクが見つからない。
『タンク交換してたのかなぁ・・・』
ふと気づくと、本棚に並んでいた雑誌やカタログがテーブルの上に山積みになっていました。
目を通すカタログが残りわずかとなり、諦めかけたその時・・・
!!!!
『なんてこった・・・』
それは数ヶ月前に本棚の隅に追いやられていた1冊のカタログ。
見慣れないタンクに大きく書かれていたバイクの名前、その下に小さく書かれていたのは・・・
HARLEY-DAVIDSON